車や高級品など従来は実店舗でしか購入しなかったものでも、近年、消費者の間ではオンラインショッピングが強く支持されています。ただし、多くの小売業者やブランド企業は、消費者の期待を満たせるオンラインショッピング体験を提供することに苦労しています。幸いにも、Adrien Zanelli氏の会社、Retail VRは高級品から日用品まであらゆる商品に対応する革新的な没入型オンライン小売商品ソリューションを開発してこの課題に立ち向かっています。
高級ファッションを身近に
Retail VRのファッションとアクセサリーの顧客には、Kenzo、Maison Rabih Kayrouz、Sarah Paccini、Sidasなどが名を連ねています。高級ファッションの購入者がミラノのショールームやパリ、東京、ニューヨークの主要店舗に行けなかったとき、Retail VRはMatterport Pro2 3Dカメラでデジタルツインを作成しました。高解像度の3Dビジュアルを提供することで、買手や特別招待客は自宅のコンピューターあるいは携帯電話から操作していても、その場にいるかのような極めてリアルな体験を味わうことができます。
Matterportデジタルツインに入ると、買手は高級ファッションをまとったモデルの周りをバーチャルに歩くことができます。写真のようにリアルな静止画が撮影されているため、ショールームを見学している買手は、衣服のラインをどの角度からでも見ることができ、衣類の縫い目や生地の質感を拡大表示してじっくり確認することができます。
「買手は一級の没入型体験を求めています」とRetail VRの共同設立者であり、国際事業開発部の責任者でもあるAdrien Zanelli氏は言います。「当社のバーチャルリアリティと拡張現実のソリューションの場合、買い物客はオンラインと実店舗の買物の両方の長所を享受できます。お客様は現実問題として時間を節約したいと考えていますが、パーソナライズされたエンゲージメント、斬新さ、楽しさも期待しています」
Retail VRは最近、ヨーロッパのある高級ファッションブランドのために、そのブランドの優美なアパレルショールームの3DレプリカをMatterportのデジタルツインを使って作成し、生身の営業担当者が同期して案内するバーチャルツアーを開催できるようにしました。Matterport 3D Showcase SDKのような開発ツールにアクセスできるMatterportプラットフォームパートナーとして、Retail VRは顧客のカタログをマルチメディア機能のレイヤーに沿って組み込むことができました。そのおかげで、営業担当者はMattertagsをクリックすると、アイテムの仕様を確認したり、お客様が関心を示した商品を紹介するビデオを表示したりすることができるようになりました。
「これまでだと買手は米国やアジアからヨーロッパに出張して新しいコレクションを見て発注する必要がありました。デジタルツインソリューションの導入で利便性が増しただけでなく、環境面でも重要な影響が及んでいます。たとえば、Kenzoの1つのバーチャルショールームだけで1,200トンの二酸化炭素排出を節減できることになります」とZanelli氏は言います。
自然派ホームケア製品と洗浄剤製品のフランスのメーカー、H2O at Homeは自社のグローバルな販売チームにとってRetail VRのバーチャルショールーム・ソリューションが理想的だと考えています。最近では、営業用の対面式の新製品発表会をオンラインイベントに移行しました。Retail VRは、テーマに沿った魅力的な環境に新製品を展示したMatterportデジタルツインへのアクセスをわずか2日間で3,000件も獲得しました。
消費者向け包装商品とスーパーマーケット向けソリューション
また、カマンベールチーズ「Présidente」を製造する別の顧客、多国籍ブランド食品メーカーのLactalis Internationalでは、Retail VRのMatterportベースのバーチャルショールームにより、トラフィックが10倍に増加しました。
Retail VRはLactalisの製品マーチャンダイジング計画の策定も支援しています。Lactalisは食料品店の棚のデジタルツインを利用することで、何百、何千もの店舗の棚に配置する製品の正確な場所と数量を決定する大手スーパーマーケットチェーンのカテゴリーマネージャーに向けて、製品ラインアップの臨場感あるステージングを行うことができます。
スーパーマーケットが棚に並ぶ製品の行と列ごとに正確な寸法を計算できるよう、食品パッケージのサイズは慎重に計算する必要があります。Matterportデジタルツインを利用することで、美味しそうな食品パッケージの画像を紹介すると同時に、パッケージを正確に測定して、味気ない棚割り図をより魅力的な拡張現実へと変えています。
Retail VRは特許取得済みのプロセスを使用して、WD-40のような包装商品の顧客が2次元の.psaプラノグラムファイルをSpaceman、JDA、Coherisのようなマーチャンダイジングソフトウェアからインポートできるようにしています。同社は自動化機能を利用してそれらのファイルを3Dオブジェクトに変換することで、リアルな棚とゴンドラ陳列をデジタルツイン内に作成しています。
Retail VRによる小売ステージングへのバーチャルなアプローチによって、Lactalisは提案した品ぞろえ戦略(各スーパーマーケットがストックすることに同意する商品のサイズと種類の範囲)についてスーパーマーケットからより迅速に了承をとりつけることができます。品ぞろえの決定は複雑で時間がかかることがありますが、
Retail VRのソフトウェアとバーチャルツインを利用するとさまざまなオプションが瞬時に生成されて、数日、場合によっては数週間もの時間が節約できます。
「小売の品ぞろえ戦略立案は以前は非常に複雑で、5回会議をする必要があり、その間にすべての変数を再計算しなければなりませんでした。今ではデジタルツインがあるので、複数の可能性について話し合って分析した後、決定を下すことができ、すべて1回の会議で済んでしまいます」とZanelli氏は言います。
Nestléに対しては、Retail VRは同様に店頭の看板や特別な展示用備品など、バーチャルな製品マーチャンダイジングを支援しています。「デジタルツインのおかげで、重要なスーパーマーケットチェーンのマネージャーと直接会合を行う際に、マーチャンダイジングの提案を巨大なスクリーンに映し出すという胸躍る方法が実現します。このソリューションを利用するとリモートミーティングの際も素晴らしい印象を与えられます。デジタルツインによって、小売ステージングのより高水準な新しい基準が確立されます」とZanelli氏は言います。
加速する市場調査
Retail VRにとってもう1つの重要な分野は買い物客調査です。この調査では、買い物客が店内の棚に並ぶ商品の選択肢を見たときにどのように行動するのかを分析します。店舗環境を物理的に構築する必要がある場合、これらの調査は高いコストがかかります。一般的な棚の状態を再現するために、棚の通路にスポンサーメーカーの製品と競合製品を並べる必要があります。別の製品の品ぞろえも調査する必要があるため、このプロセスはさらに複雑になります。
それに比べて、デジタルツインを使ったRetail VRの拡張現実の方法は、買い物客調査の管理手法を一変させて、仮想棚の品ぞろえを簡単に素早く変更できます。その結果、調査にかかるコストが約5万米ドルから1万米ドルに減り、フォローアップ調査では5千ドルに減りました。「包装商品のお客様の場合、デジタルツインを組み込んだ当社のバーチャル・マーチャンダイジング・ソリューションを使って買い物客調査を実施すると、コストを1/5に削減できます。さらに、調査が完了する速さが倍になるため、意思決定者は製品販売を拡大するための知見を瞬時に得ることができます」とZanelli氏は言います。
ブランド企業と店舗は常に新しいコンセプトに取り組んでいます。重要な小売マーチャンダイジングの決定に数百万ドルがかけられている中、当社は、真に没入感のあるショッピング体験を実現する豊富なビジュアルと共に、より柔軟で効率的なソリューションをお客様に提供できることを嬉しく思います」とZanelli氏は言います。
ERP、eコマース、B2Bのプラットフォームとの容易な接続
Zanelli氏は、デジタルツインを使用してシームレスなビジネスプロセスを実現するRetail VRの統合機能を顧客に紹介しています。同社はElastic Path、Le New Black、VisiativなどのB2Bテクノロジーのリーダーと統合しています。B2C eコマースでは、MagentoおよびShopifyと連携しています。「Shopifyの拡張機能を使うと、お客様は自社コンテンツをRetail VRバーチャルショールームに簡単にインポートして取引を円滑に進めることができます」とZanelli氏は言います。「当社のお客様は、小売のイノベーションを加速させながら、生産性を上げることができて満足しています」
Retail VRはMatterportのAPIとSDKを利用して、そのアプリと統合機能を市場最先端の当社空間データプラットフォームで構築、商品化するMatterportプラットフォームパートナーです。プラットフォームパートナーとして利用可能な幅広い商業的メリットを通じて、アプリケーションの収益化に成功しています。例えば、Matterportの販売ネットワーク、充実サポート、共同マーケティング、販売プログラムといったメリットにアクセス可能です。プラットフォームパートナープログラムの詳細と参加申請については、https://matterport.com/platform-partner-programをご覧ください
Retail VRについて
Retail VRは3D、仮想現実、拡張現実のソリューションを大手ブランド企業や小売業者向けに開発しています。そのサービスには、バーチャルショールーム、小売ステージング、店舗内活性化などがあります。
本社
フランス、ナント
製品
Matterport Pro2 3Dカメラ、Matterport 3D Showcase SDK
成果
- 包装食品メーカーのバーチャルショールームのトラフィックが10倍増
- バーチャルマーチャンダイジングとデジタルツインを使うことで、買い物客調査を2倍速く、1/5のコスト減(約5万米ドルから1万米ドルに削減)で実施可能に
- 包装食品メーカーは店頭陳列オプションを効率的に可視化することで、小売戦略会議を5回から1回に低減
- 高級ファッションブランドは1つのバーチャルショールームを提供することで、1,200トンの二酸化炭素排出を削減
https://matterport.com/ja/industries/case-studies/retail